漫画感想

◆卒業式 全1巻5
著者(榛野なな恵

榛野なな恵作品集 卒業式 1 (クイーンズコミックス)

榛野なな恵作品集 卒業式 1 (クイーンズコミックス)

「Papa told me」を描いている榛野なな恵の短編集。
「卒業式」「放課後」「早春賦」「野茨姫」の4編。
「卒業式」
普段は要領よく生きている優等生の女子中学生が、中学の卒業式の日に、町ぐるみで見て見ぬふりをしている政治家一族の不正を、たった一人で暴く話。
「放課後」
女子高校生2人が、春休み間近の放課後を過ごす話。
「早春賦」
由緒あるお嬢様学校での生き方に疑問を感じる女子高校生と、その学校で誇りをもって授業をしている老女教師との話。
「野茨姫」
憧れていた姉が結婚によって既成の価値観にはまってしまったことに絶望した少女が、学校でひとり孤高に生きている少女との交流によって、自分をみいだす話。
とまあ、5W1H風に説明してみた。
・・・陳腐な説明だ(苦笑)
まあそれはともかく、榛野なな恵の作品でつねづね語られているテーマと同じく、この短編集のテーマはすべてにおいて、「孤高であること」であろうか。
ようするに、すべての話に出てくるキャラクラターは、既成の価値観に疑問を持ち、立場的にマイノリティ(少数派)であるのである。
そしてそれぞれの人達は誇り高く、気高く生きている(生きようとしている)。
「女の幸せは結婚すること」みたいな、「普通の考え方」「一般的価値観」「常識」といったものを、懐疑的に描いて、受け手に、「自分の足で立って歩こう」「自分の価値観を持とう」「孤高に生きるのって素敵なことだ」「精神的な自立」みたいなことを訴えかけているんだよな。
まあ、「お前らの勝手な価値観押し付けるなや!」とか「群れないと何もできない臆病者が!」とか「自分で考えて、自分で決めろや能無し!」みたいなのでも同じ意味だな(笑)
もちろん、孤高に生きることの格好良さというのは認める所であるが、やはり「普通の人」には難しい生き方ではあるな。
特に日本という国は、島国根性丸出しで、閉鎖的で排他的で、「みんなと同じ価値観」を持とうとすることが往々にある。
上であろうと下であろうと、マイノリティには容赦のない国なのだな、日本は。
なんつっても、民主主義国家だからな(笑)
やはり、TVがいかんのだよね。
あれは、人間を同じ色に染める、「巨大洗脳装置」だからね。
一時期、オウム信者は「薬」などによって洗脳されていて馬鹿だ、みたいな風潮があったが、<少なくとも俺はそう感じたぞ
自分も含めて、我々一般人も「情報」という薬によって、みんな同じように考えるように洗脳されていることを忘れてはいけないよな。
でまあ、やはりそんな国で、強く気高く孤高に生きるのは並たいていではない。
努力は無論のこと、才能も勇気もいるからねえ。
俺も、そうありたいとは思っても、なかなかそうはねえ(苦笑)
あと、「普通」であることを醜く汚く描き、「孤高」であることを美しく魅力的に描くことによって、「孤高」である人達にエールを送っている・・、
と同時に「普通」を侮蔑することで、優越感を感じるという構図もやはり存在してしまうよね。
「普通だって別にいいじゃねえか!、普通な人間がいるから、孤高の人が格好良く見えるんじゃないか!」っていう考え方もあるからね。
まあ、「優越感と劣等感は同時に存在する」というのが俺の持論だけどな。
難しいとこ。