小説感想

◆神託学園の超越者<トランセンダー> (GA文庫)
著者:秋堂 カオル


というわけで、GA文庫奨励賞の受賞作「神託学園の超越者(トランセンダー)」
ベタな学園異能バトルを読みたかったので買ってみたのだが、なかなかに面白かった。
第一印象どおりに、世界観や能力などはどこかで見たような感じであり、実にベタな内容。
ではあったのだが…ひとつ大きな特徴があり、それは主人公が非常にメタ的な能力を持っていて、それゆえに「メタフィクション」になっているところである。
本作品は、そのメタ的なギミックを多分に生かして書かれており、その一点突破な作りが普通の学園異能バトルとは一線を画す内容となっていた。
正直、「メタフィクション」はちょっと苦手なところもあるのだが、そのギミックを最大限に使いつつテンポよく綺麗にまとめて終わらせていたので、読後感はなかなかに良かった。
キャラクター描写やバトル描写などの文章表現もこなれていて、勢いがあるのもラノベらしく非常に良い。
とはいえ、個人的にはキャラクターや世界観が結構気に入っていたので、メタ視点なしでのベタな学園異能バトルで長期で続けて欲しかったところもある。
でもそれだと、「メタフィクション」という特異性がなくなり、凡庸な作りにもなってしまうので、まあ仕方ないか…ちょっと、もったいない。

この「物語」自体はきっちり完結しているので、続編とかは難しいとは思うのだが、キャラクターとかがかなり好きになってたので、「学園ラブコメ」とかで続きが読みたい気はするが…まあ、まったく別物になってしまうから、これも仕方ないか。
彼らの未来は、読者の心の中で始まるというのも、美しくはある。
そんなわけで、なかなかに力量はあると思うので、この作者の次回作には期待したい。



神託学園の超越者<トランセンダー> (GA文庫)

神託学園の超越者<トランセンダー> (GA文庫)