小説感想

◆七人の武器屋 レジェンド・オブ・ビギナーズ! 4(65点)
著者(大楽絢太)、イラスト(今野隼史

サンキュー、エクスガリバー!
というわけで、第17回ファンタジア大賞「佳作」・・大楽絢太(本名)による「七人の武器屋 レジェンド・オブ・ビギナーズ」
内容は、武器屋「エクス・ガリバー」の新オーナーはオコサマ七人!?・・お気楽起業伝説、始まる!!って話。
まあ、なかなかに面白かった。
こちらの「武器屋」の方は、テクニカルな手堅い構成力と文章力を持った準入選の「紅牙のルビーウルフ」と違い、同じライトノベル的王道ではあるものの、パワーファイター型であり、正直構成力やら文章力はいまいちな部類ではあった。
しかし、スレイヤーズを思わせる勢いのある一人称がサクサク読み進めさせ、TRPGリプレイを思わせるパーティでのワイワイガヤガヤ感などは楽しく、最後の作品解説がこの作品のすべてを物語っているように、非常に「明るく楽しい」雰囲気に満ちていて、読んでいる間存分に楽しかった。
なにより、ファンタジーを題材にしつつ描かれた「モラトリアムの憂鬱」というテーマがオサレな描き方ではなく、粗削りながらも勢いと爽やかさのあるそれで表現されていて、最後にスコンと・・
「間違っててもいいから、思い切って環境を変えてみると、自分の新しい一面が見えてくるかもね」
という作者の実体験に基づくメッセージとなって染みてくる辺りが心地よい。
キャラクターも7人もいるわりにはなかなかにキャラも立っていて、それぞれが「迷い」や「夢」などを持ちながらも、まるで学生のころの「文化祭」のノリのように、お気楽極楽に仲間と「何かをやり遂げる」という疾走感の元に動いたり喧嘩したりラブコメしたりして「一体感」を築き上げていくとこも、「あの頃」を思い起こさせよい感じであった。
まあ、話自体は結構「ご都合主義」には進んで行く訳ではあるわけだけども、「経営」というネタ自体が面白くもあり、それをハードな展開でなく、ごくライトな展開でポンポン進めて行く辺りはライトのベル的でもあり面白かった。
とりあえず、このネタとキャラクター達には愛着もできたので、次回作には期待したいところである。
あと、イラストの今野隼史さんの絵は、「紅牙」の椎名優さんの絵に比べるとかなり質が落ちる感じではあったのだが、個人サイトの方を見せてもらうと意外に良い感じでもあり、時間をかければもっと良い仕上がりになりそうな雰囲気もあるので、コレも今後に期待したいところである。