小説感想

はてなダイアリーは、なんかラノベ関係の画像が充実してていいね・・


◆君の居た昨日、僕の見る明日 第1巻「STARTING BELL」3
著者(榊一郎)、イラスト(狐印)
君の居た昨日 僕の見る明日(1)―STARTING BELL― (富士見ファンタジア文庫)
というわけで、堂々たる最終回を向かえた「スクラップド・プリンセス」の榊一郎の、ドラマガ連載第2段となる作品、「君の居た昨日、僕の見る明日」の第1巻。
今巻は、高校一年生長居優樹は、ある日幽霊学校・鈴乃宮学園に取り込まれて、そこで奇妙な「学園ごっこ」を行うことになるって話。
大団円を迎えた「すてプリ」の後枠である、榊一郎ドラマガ連載第2段となる「君僕」
「ハートフルSFファンタジー」であった「すてプリ」とはうってかわって今回のネタは、現代ものの「ハートフル学園ファンタジー
榊一郎お得意の「ちょっとの暗さ」やら「ハートフルさ」やらはあるのだが、「ファンタジー色」やら「バトル描写」やらはほとんどないんで、初っ端としては正直かなり地味であり、キャッチーさに欠ける感じである。
漂流教室」っつう感じで、いきなり閉じられた世界でもあり(この辺は「すてプリ」に通じるところはあるか)、世界やキャラに広がりが足りない感じでもあり、これはちょっと「引き」は弱いかなあ。
この頃流行りの「学園もの」ってのは目の付け所は良いとは思うけど、どうもやっぱり今のところは世界やキャラへの魅力に欠ける感じかな・・とりたてて「押し」のないイラストも含めて。
1巻完結とかならともかく、連載で長く続けるにはポテンシャルが小さいという感じか・・。
まあ、「すてプリ」だって初っ端はかなり地味な始まり方だったわけだし、まあ今後の展開に期待かな。
ドラマガ連載版では元気な赤毛の巫女少女は出てきているようだし、一応楽しみにはしておきます。


◆世界が終わる場所へ君をつれていく 全1巻4(70点)
著者(葛西伸哉)、イラスト(尾谷おさむ
世界が終わる場所へ君をつれていく (MF文庫J)
というわけで、「世界が終わる場所へ君をつれていく」
青森県に突如現れた巨大な「銀の樹」をきっかけとして僕は彼女と出会い、「銀の樹」を見るために彼女と共に自転車を走らせるって話。
ジュブナイルな雰囲気のある青春小説であり、オチも非常にさわやか。
最初のイメージは「セカイ系」で「エロゲー」な感じだったんだけども、どっちかっていうとライトノベルより児童文学に近いかもしれない。
宇宙からやって来た謎の生命体「銀の樹」というギミックはSF風味ではあるが、基本は「僕」と「彼女」によるボーイミーツガールであり、「日常」に突如やって来た「銀の樹」という「非日常」を切っ掛けとしての少年と少女の出会いと触れ合い、でもってそれぞれの成長である。
描写もできうる限り「リアル」に臨場感を持って描こうとしており、感情移入度は大きめ。
七姫物語」(まだ読んでないけど)なんかも描いてる尾谷おさむの絵柄もジブリチックであり、「海がきこえる」や「耳をすませば」なんかのジブリの「青春もの」を思い出させてくれて、ビジュアルは想像しやすかったな。
まあそれゆえ非常に地味でもあり派手さには欠けたのだけど、一本の青春映画を見たような感じでもあり、なかなか面白かったです。


◆約束の柱、落日の女王 全1巻4(70点)
著者(いわなぎ一葉)、イラスト(AKIRA)
約束の柱、落日の女王 (富士見ファンタジア文庫)
というわけで、第16回ファンタジア長編小説大賞準入選受賞作の「約束の柱、落日の女王」
隣国の脅威が迫るシュラトス王国女王クリムエラの前に、一人の戦士カルロと名乗る男が現れ、そして次第に二人は心引かれ合うことになるって話。
非常に真面目なファンタジーであり、純粋なラブストーリー。
ケレン味や派手さはなく地味で淡々としてはいるが、それらを丁寧に描き出していて、なかなかに好印象であった。
正直、もう一押しの「派手さ」が欲しかったり、ちょっと初っ端の構成が読みにくかったり、詰め込んでるがゆえに駆け足な印象な所もあるんだけども、一本のファンタジー映画のようなバランス感覚の良さがあり、面白かった。
クリムとカルロの時を越えた「出会い」から始まり、孤独で人を信じてなかった二人が少しづつ触れ合うことで、互いが互いを変えて行き、そして世界も変えて行くという描写はお約束だがさわやかで、痛快でもある。
最後は「二人は幸せになって、ハッピーエンドて万々歳」って感じではなかったが(笑)、切なさと悲しさの残るラストはなかなかに印象的であった。