小説感想

神曲奏界ポリフォニカ(青) 第2巻「ふゅーじてぃぶ・ぶるう」75点
著者(築地俊彦)、イラスト(兎塚エイジ

というわけで、築地俊彦によるポリ青の第2巻。
今回は、クルナとルーファは駆け落ちした神曲楽士と精霊を探すって話。
いやあ、面白かった・・正直、築地俊彦をなめていた。
てっきり築地俊彦のことだから、世界そっちのけでラブコメテイストたっぷりに軽く明るいドタバタでもやっていくかと思ったら・・開けてみると、ポリフォニカ世界にがっつり食い込む「世界の根幹」の話をやっていて、びびった。
「廃墟派」「ホゾナ理論」そして「ブラウクローネ号事件」と、人間と精霊の関係、神曲の存在というこの世界の在り方に疑問をズガっと投げ付けていて、正直しびれた。
人間と精霊というそれぞれ違う存在がゆえに生まれる深い溝、そしてそこからそれぞれの未来へも思いを馳せて行く辺りなんだかSFちっくである。
特に、契約関係を「援助交際」と言ってしまう辺りのドラスティックぶりがすごい。
確かに、神曲を「金」とか「SEX」とかの暗喩としてとらえることも十分ありなわけではあり、そこから神曲なしでの人間と精霊の関係を描こうっていうのは、なかなかに痛快。
それがゆえに、主人公のクルナは他の作品と違って「神曲嫌い」って流れなのなあ。
まあそんなクルナではあるが、シリアスなネタがテーマになってはいるが、築地俊彦らしい「ろくでなし」で「ニート」な「駄目人間」ぶりは楽しく、ルーファとのボケツッコミ関係も愉快であり、これはこれで楽しい。
今巻は、そんなクルナの過去の一端も分かり、かなり感情移入もできるようになってきた。
まあしかし、締め方はもうちょっと工夫が欲しかったところではあるな。
赤のコーティが出てきたことで、赤とのつながりもあるのを見せたのは良いのだが、それで終わっちゃったり、あっけなく解決しちゃうとことか拍子抜けではあった。
とはいえ、「世界の根幹」の落とし方と同時に、この二人の関係(とボケツッコミ)がどのように落ちて行くのかも気になる感じなので、次巻以降も楽しみにしたいところである。